れ以上のことを二人の間で望むべきでないと思い、またそのようなことを望むなら、今はそれさえ達せられるだろう幾らかの己惚れさえあったが、恐らくこんなときには、誰でもそのような男女の頂上の望みを持つに定っているからには、その胸のどきどきとするあの羞らいだけは、せめて千鶴子にだけさらけ出したくはないのだった。そんなことは、下劣なことだと別に矢代は思わなかったが、どんなに巧妙な理窟があろうとも、相手の婦人に窮地に飛び込むことを要求しているのに間違いはないのであってみれば、せめてやむなくなるまでは、一層彼はその行為を心中認めたくはないある心が抜けきれなかった。
「裸身になれ、裸身に。」
 東京にいるときでも友人たちは矢代によくこう云って迫り、叱り、忠告し、果ては嘲笑さえしたものであったが、今も矢代はその声声が聞えて来て、広場の樹樹もみなにたにたとした嘲笑の顔にも見えて来る。しかし、もし本当に裸身になって見よ。そんなことが出来るわけのものじゃあるまいと矢代は思う。
「みんなの奴、嘘をついてるから、裸身になって見せてるだけさ。あのえへえへ喜び勇んだ醜行のどこが裸身だ。人の眼をくらますために醜行を演じる
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