だ。あの無というお墓から、放射状に大通りが八方へ通っているでしょう。僕らはその一つのここにいるんですが、しかし、ここにこうして生きて話してる。ところが、生きていながら朝からコーヒー一杯も飲まされないというのは、これや無茶だ。」
真面目に聞いていた千鶴子も思わず矢代の皮肉に、「くッ。」と笑ったが、意外におお真面目な矢代の表情にまた自然と黙って聞くのだった。
「この通りがお墓の無から出てるから、お茶なしでもないだろうが、しかし、日本の通りはお墓の無と有とが重なった一点から出てるから、どんなになったって、飯が食べられぬということは絶対にない。御飯が食べられないより食べられる方が有り難いに定ってるんだけれども、それを馬鹿にするものが日増しに多くなって来てるんです。そんなら、つまりお墓へ吸いよせられて行ってるのだ。おまけに、さア急げと号令かける男まで出て来てるから、お墓詣りに、血を流す。」
「ちょっと、それはここのお墓のことなの、日本の? どちらですの。」
「ここのお墓だ。」
と矢代は云って笑った。
「日本にはお墓詣りに血を流したものなんかいやしない。流さぬためにお墓詣りに行くんだが、ここの
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