点でしよう。つまり完全な無だ。ところが、王さまのある国はその原点が生きた有の一点だから、つまり生命です。生活の原点が無と有とじゃ、そこを中心にして動いている人間の頭がまるで違っていくわけですよ。たとい同じように見えたにしたって、有るものと無いものとじゃ、やはり違う。」
「じゃ、日本とこちらは皆ちがうのかしら。」
千鶴子の眼は凱旋門を見詰めたまま放れなかった。
「それや同じ所もありますよ。だけども、中心を墓という無にしたものなら、それは人間というものは、みな墓だと思い込んだ人の無の頭の中だけで、幾何学をやっているようなものですよ。つまりそれは科学でしょう、そのような科学の中でなら、これなら同じだ。しかし、僕らは何んと云っても生きているんだから、生きてる意義というものは、人をみな墓だとみて幾何学をやることか、あるいは生きているからは、むくむくと動いてやまぬ愛情が必要に定っているんだから、それを互に何とか清純なものにしたいと希う努力にあるのか、という風な問題が、いろいろ形を変えて顕れているんだと僕は思うんです。そこが分らんものだから、左翼と右翼も人の分らぬそこのところにつけ込んで、まことし
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