う、「ええ、そうです、僕矢代。」と返事をしていた。
「誰からだ。」
久慈は矢代が訊ねても黙って千鶴子と受け答えしながら、「僕、矢代だよ。」と意地悪く云い張って電話口から放れようとしなかった。矢代はねじれた久慈の脊骨に添って細かく汗の浮き流れているのを眺めながら、ホテルへ安全に帰りついた千鶴子のその報らせに一層久慈の戯れものどかに感じられ暫く受話器を彼に任せておいた。
「君の恋人何んだかしきりに云いわけしとるぞ。さア、代るよ。」
矢代は久慈に代った。
「僕、矢代。」
「さきほどは――あのね、あたしピエールさんに夜食を御馳走になってたものだから、遅くなってしまったの。久慈さんいけないわ。せかせかしてたもんだから、あなただと思って。」
「久慈がね、今ごろ帰って来たんですよ。どこへ行ってたかまだ白状しないんだが、これから一つ、虐めようというところなんです。」
「真紀子さんは?」
「あの人、とうとう高さんと踊りに行っちまった。帰りは僕一人でね。」
「じゃ、まだなの。」
「まだです。きっと遅くなるでしょう。」
「心配ね。あたし、お礼に行かなくちゃと思うんですけど、どうしたらいいかしら。」
「い
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