は久慈の廻している腕を掴んで顔を見た。
「幼稚だよ君のは、そんなものなんか、ここで威張ってみたって、いったいこのパリで誰が真似してる。」
「真似の出来る奴が、誰がいるのだ。」
「こ奴。」と云うと、久慈は矢代の首を揺り動かした。
「真似の出来ん品物を売り出して、成功したためしがあったか、真似さしてこそ豪いんじゃないか。」
「じゃ、君は何んの真似してるんだ。」矢代はまた詰めよって云った。
「僕は世界の真似をしてみせてやってるだけだ。真似一つ出来ずに威張ったところで、それや、真似が出来んということだよ。」
「いつまでの猿真似だ。」
 と矢代は云うと久慈から身体を放そうとした。
「真似出来んものなら出来るまで一度してみろ。それが修業というものだ。僕らがここのこの坂をせっせとこうして登っているのは、何んのためだ。君は真似も一つして見ずに、この急な坂が登れると思うのか。ふん、ここは胸突き坂だぞ。それも世界の胸突き坂だ。もっと胸を突かれて修業しろ、しろ。チロルでいったい何を君はしてたのだ。」
 と久慈は云うと今度は矢代の身体をぐんと突いた。矢代は石壁によろけかかった身体を片手で跳ね返しながら、
「君
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