を合せて笑い出した。入り代りに旅行者らしい三四人の客がまた中へ這入っていくのを振り返り皆は顔を撫でた。
「ああ気持ちが悪い、どっか、せいせいするところがないかね。吐きそうだ。」と矢代は先に立って山の頂上へ登りながら、「あれはいったい何んという思想だ。」
と久慈に訊ねた。
「いや、実はおれもあれには参った。」
久慈のそう云う声に、皆の夕刻までの論争の意気込みも一時に吹き飛んでしまった形だった。
「あそこは僕も知らなかった。この次は機関銃だぞ。上のお寺へ参るのも骨が折れる。」
と東野は云ってひとりくつくつ忍び笑いをした。頂きの寺の横の広場に二十本ほどの房を垂らしたビーチパラソルが開いていて、その下に弁慶縞の敷布のかかった丸テーブルが一面に並んでいた。ここのテラスも他には見られぬ古風な野天の仕立てだった。どのテーブルの上にも矢車草の花影からランプがかすかに油煙を上げていた。客一人ない広いそこのテラスの中央に三人は陣取ってレモネードを命じたが、卓に肱をつきほッとするとまた誰からともなく笑い出した。共通の無気味な洞窟から逃げ出してきたばかりの捕虜という顔である。互に視線を避け合っている笑顔
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