も、氷河を見馴れてしまった矢代には自然だった。ふと覗く店店からも時計の音が際立って高く聞えた。
昼食の後矢代と千鶴子は登山バスに乗って山の中腹まで行った。バスの中の人人はそこのホテルへ帰るものや、山頂へ行くものたちであったが、詰っている周囲の顔も、もう矢代たちにはどれも外人の顔のようには見えなかった。いつの間にか違う種族の人間も、東京の街角でバスの来るのを待ち合う顔と同じに見えている二人だった。
山の中腹でケーブルに乗り換え、さらに山頂まで二度ほどのレールを変えた。ケーブルの下は花の野の斜面であった。街が次第に低く沈むに随い、横を流れる河が渓間に添いウィーンの平野の方へ徐徐に開けて行くのが見えた。終点の駅は旅宿をもかねていた。人人はそこのホールで皆足をとどめて眺望を楽しみ、そこからまた下へ降りるのであったが、矢代たちは駅から放れてまた頂の方へ登っていった。もう後からは誰も来なかった。
樹の一本もない山路である。路の両側には氷のように塊った残雪が傾いて流れていた。雪のない所は地を這ったねじれた灌木が満ち、一面に馬酔木《あしび》の花のような小粒な花の袋をつけていた。
「あらあら、
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