灯台の鋭く明滅する光りが見えた。どこかフリジヤの花を思わせる少女たちの姿だった。光りの廻って来るのを待っているうち、矢代がパリへ着いて間もないころ料理店の一隅で、偶然この幼い子たちを見た記憶が蘇って来た。すると、またその光りの遅い廻転は、ふと父の骨が火になって出て来たときの、最初の鮮やかな色を思い出させた。それは繊細な花茎を連想した直後の彼の感傷とはいえ、父の死の光りの前の少女の姿は、一層活き活きと揺れたわむ呼吸に見えて美しかった。
「平尾さんのお嬢さんはパリでお生れになったのですか。」
久木男爵も、二人の令嬢の自然なフランス語を耳に入れたらしくそう訊ねた。
「そうです。この下の方ですが、これで日本を今日初めて見るのですよ。いろいろ教えこむのにこれからまたひと苦労です。何しろパリじゃ、子供の遊戯に、恋人から手紙の来るのを待つ遊びがあるもんですから、見ていてときどきひやりとしますよ。」
平尾男爵のそう云うのも待たず、皆の笑い出す声の中に沈まりながら、令嬢たちはまだ無心に話しつづけた。
「子供のことというと、僕も外国では自分の子供と同じ年恰好の子に会うと、いつも一緒に遊んで見ることにしたが、そこの国民の成長力を感じるには、それが何よりですね。」と東野は久木男爵に云った。
「そうそう、どこの国の子供も子供のときは、みな同じように可愛らしいが、大人となると、またどうしてあんなに違うもんだか、相当憎いのもおりますからね。いったい、子供と大人とどのあたりで違って来るものか、なかなか微妙な研究問題ですよ。これは、わたしもときどきこの年になって、自分もこれで憎い人間になっているのかもしれぬと、考え込んだりしますからね。」
久木男爵のそう云うのを矢代は聞くともなく聞きつつ、思わず、自分にとっては事実そうだと忘れていた灯台の光りをまた見詰めた。しかし、怨もうにも怨めぬこの憎さは、天から転がり下った宿命の糸に見え、少女のか細い肩の間から徐ろに廻って来る光りの瞬きも、ますます父の最後の笑顔をほのかに浮き出す灯火のように、愁いを含んで射しこもって来るのだった。
「ね、ほんとにお父さん、あんなに喜んで死んだんですもの。」
父の亡骸を抱いた矢代の傍で、そんなに喜んだ母の顔も彼の眼から離れなかった。しかし、それもこれも起ったすべてのことは誰も知らず、ただ彼の胸中で人知れず燃え上っては、やが
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