ばならぬように、人の心も自分の光の光源がどこにあるのかここで初めてよく分るのだった。矢代は自分も幾度も折れてみて来た光線に似ているなと、寝ながらも思った。そして、その光源の方へ今や戻って行こうとしている自分だと強く感じた。
こんな感じが強かったためか、また彼は自然に、別れるときに祈りを上げたカソリックの千鶴子の姿も思い出した。この千鶴子の姿は、今までに幾度となく彼の思いの中に泛んで来た姿だったが、今の千鶴子の祈る姿は、不思議と喰い違う歯車のきしみを感じて矢代は困るのだった。
「ここで思ったり為たりしたことは、あたし一番変らないと思うの。本当にそう思うわ。」
ふと何気なくそのとき云った千鶴子の言葉だったが、どこかに矢代の希う光源とは異う光りに満たされたその声が気になった。前にはそれもあまり異とせずにすませられたものまでが、この国境にさしかかり急に心に閊《つか》えて来たのが、ますます膨張して来そうな気配も伴って矢代は困った。
「それは、君はカソリックだからでしょう。そこが僕と違うのだなア。」
矢代はそのときも千鶴子にそう云ったのを思い出し、今も同じように云って笑いに紛らそうとしてみたが、どこかに笑いでは応じきれぬ激しいものもぞくぞく盛り上って来そうな不安が強まると、我知らず舞い立てて来た濛々とした疑いの煙りの中で、思わず両手を振って押し鎮めたくなり、心を国境の一点に向けようと努めてみるのだった。しかし、身体だけ無事に国境を通過させるだけでは足らず、精神もともに通り抜けようとする気持ちもおさまり難く動いてやまなかった。
いや、難しいものが来た。それも毎日来ていたものばかりなんだが――と矢代は思い、困ったときに思い泛べる伊勢の大鳥居の姿を、またこのときも自然に眼に泛べた。
「この汽車、十時間ほど遅れているから、今ごろは満洲里じゃ、待ちぼけくって弱ってますよ。」
と南はフィルムの受取人のことを思い出したものかそう云って笑った。
「国際列車の継ぎ目は、大幅に動くもんだなあ。十時間か――」
「同じ日がこのあたりで二日もあるんだから、矢代さん、ここらあたりで、日を按配しとかれないと、満洲里で電報打ちぞこないますよ。」
南から注意をうけて初めて矢代は日のことを考えた。いつも日を忘れる癖のある彼には、同じ日が二度も重なっていることなど考えもしなかったが、それにしても実に暢気
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