る拷問攻めのような再会が、矢代には出来がたいことであった。考えようによれば、それはもう愛情の問題ではなく、脅迫にも見れば見られる、薄情さに変ってしまう再会にも近かった。
「外国にいちゃ、とにかく、云うことすることに間違いが多いですからね。」
 と矢代はあのときも千鶴子をたしなめて云ったことがある。
「みんなこちらのことは間違いだなんて、そんなこと――あなたがいつもそんなこと思ってらしったのが、何んだかしら、いやアな気持ちよ。毎日あんなに楽しかったのに――」
 千鶴子は彼に答えてから急に沈んだのもまた矢代は思い出したりした。そのときの沈んだ千鶴子は、帰ってからいよいよ自分と会うというときにも、一度は、あのときのような伏眼な瞼の影を湛えて考えるにちがいない。それも傍からしっかりした眼で彼女の母が見て、自分よりはるかに良い結婚の相手が沢山千鶴子に追っている場合に、一度ならず娘に忠告を与える言葉も、今から矢代に考えられないことではなかった。しかし、いずれにせよ、こっちにいるときの二人の気持ちという幻影を変えないことが大切なら、どちらも帰って会うよりも、会わない方が互いのためだと思った。地位、身分、財産、血統、家風などという、日本の内部を形造っている厳然とした事実の中へ帰っていって、なおそのまま二人の幻影を忍ばせ支えつづけて行くためには、二人は今のうちにひらりと変り、互いにこのまま会わない方が変らぬことにもなっていく。――もしこのまま約束を重んじて勇みたち、再び会うなら、――もうそのときは異国ではない、眼が醒めた浦島太郎のように互いの姿を眺め、これがあのパリにいたときの二人だったのかと思うにちがいあるまい。――
 このように思うことは矢代をいつも苦しめた。変ることが変らぬことで、そして変らぬことが変ることと思う準備――日本へ近づいて行くに随い、一度はこんな哲学めいた心の準備をしておくことも、この場合の矢代には事実必要なことだった。それが出来るか出来ないかは別としても今に憐み合うような日の来るのを待つのは不快だった。実際考えれば何ぜ憐み合うのか、この理不尽なことも残酷に襲って来るだろうと思うと、それが一層矢代には口惜しかった。こんな口惜しさが嵩じて来ると、ベルリンにいるときどきでも、その夜はもう彼は眠りがたかった。
 しかし、何を云おうとも千鶴子はもう日本へ着いているにちがいな
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