ゃぶり取った骨骼の強く鋭敏な美しさを想像した。一つ間違えば、空中から落ちる鳥類のあの典雅なほどに華奢な儚ない骨をさえ聯想した。
「そうだ。たしかにこのあたりは、これは生物の骨骼をモチーフとして設計されたに相違ない。」
 このように久慈はひとり呟きながら、遠ざかり、廻り、翼から胴、胴から塔へと視線を移して眺めたが、塩野がこれと取り組む願いを起したとは、相当以上の大決心にちがいないと想像された。
「ね、君、これをどこから手をつけようと云うんかね。一生かかったって、この構成の美はなかなか容易なことじゃないぞ。」
 と久慈は外庭のベンチに腰かけて塩野に云った。
「僕がここを撮る気になったのは、正門の扉にキリストの浮彫があるだろう、あれが西日を横に受けて生きてるように見えたからなんだ。ソルボンヌの講義からの帰りに毎日験べたんだが、生きてるように見えるのは一日のうちで二十分ほどよりないのだね。それを撮りたいのが病みつきで、全体の新しいカメラアングルの美を何んとか一つ、再現してみたいと発心したんだが、どうもそれがね。」
 塩野はベンチに並んでいる東野と久慈と真紀子の前に突き立ったまま、さっそく撮りにかかろうともせず、もう幾十回となく手がけたこの寺院の陰翳を微笑のまま見上げていた。東野と久慈は隣り合せに腰かけているものの、どちらか一つ感想を口に出せば、忽ち意見の衝突で捻じ合う危惧を感じ、顔を合さず黙っていた。無数の鳩が羽音の旋風をたてて廻っているのを、その方向に真紀子は顔を向けつつ句をひとり考えているらしかった。
「どうです東野さん。俳句でも作りましょうや。」と久慈は云った。
「まア待ちなさい。この建物、見れば見るほど俳句に似て見えて来るんだ。妙なものだなア。」
 と東野は足を組み替えてまた仰いだ。久慈はにやりとしながら、
「これが蛙飛び込む水の音かね。」と云って笑った。
「空の音だよ。僕はこれまでゴシックのお寺を沢山見て来たけれども、どれもみな垂直性ばかり重んじているのに、ここのはそんな精神の偏見がない。翅となっている斜線がそれぞれ本態から自立して横の空間の意識を満足させているよ。何んとなく、雪の結晶に似てるじゃないか。」
「あたしもさきから、日本の生花の立花と似てるように思ってましたわ。」
 と真紀子は東野に云った。
「そうそう、立花とはうまいなア。あなたは俳句はお上手でしよう
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