いわよ。煙草一本頂戴な。」
 身体を不必要なほどに捻じ曲げ、腰を動かしながら擦りよって来て出す手首の骨が高く大きい。ひどい脇臭のうえに、鼻の両側のまだらな白粉の下から脂肪がぶつぶつ浮き上っていた。久慈と東野にもそれぞれ煙草をせがんでいる女たちも、両肩をすぼめ猫撫で声で煙草をくれとせがんだ。久慈ら三人は顔を同様に顰めながら黙って煙草を出してやると、女たちは放れて煙草を吸いつつ、それぞれ鼻声の沈んだ唄を歌い出した。
「これや、男だな。」
 と久慈は小声で矢代に耳打ちした。
「うむ。」
 と矢代も、実は自分もさきから怪しいと思っていたという風に頷いた。見れば見るほどどこからどこまでも女だが、しかし、やはり争われぬ一点の底が男だった。それも、一人ずつ女たちを見廻していくうちに、勘定台にいる女もヴァイオリンを弾いている女もすべてが男だった。久慈は腐った筵を引き剥いだ後からにょろにょろ現れて来る青い蜥蜴を見付け出すように、一度ずつ悪感が胸を走った。男だと見破られた女たちはもう二度とよって来なかったが、また別のが来て、「何んになさいますか。」と女の声で今度は快活に訊ねた。
 三人はビールを註文したが、コップが揃っても誰も義理に一口つけただけで、気味悪さにそれ以上飲もうともせず話もしなかった。久慈らの傍へ初めに来た女らは部屋の隅に固まったきり、嫌われたことをさも羞しそうに悄れて俯向いたまま、青い灯の下でいつまでも黙っていた。これがもし本当の女だったらたしかにそんなに痛手であろうと思うと、久慈は不思議に女らの悲しげな様子がまた本当の女のように見えて来て、
「おや。」
 と一瞬自分を疑った。確実に男だと分っていながら、だんだん気の毒になっていく不安な気持ちの落ち方が、一種新しい未知の世界に踏み込むような錯覚を感じさせる。それが向うの手腕だと思っても、それぞれもうこれで男を越した女以上の理想の女になっているのかもしれない。
「もうたまらん。出よう。」
 と矢代は云った。そして、身を動かしかけたと見るや、今まで悄れていた女たちは、ぱッと飛び立つような早さでまた矢代にしなだれかかって来た。
「もう息が出来んよ。」
「何に? え? え?」
 と女は嫣然と笑いつつ片腕で矢代の首を抱きかかえて覗き込んだが、何も云うことがないと見えまた煙草をくれと彼にせがんだ。
 勘定台の女は遠くから女給たちの成績
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