く、この村はどの村よりも真正直に第一番に立派な完納をして来たため、他の村村よりも米が無くなり大騒動をしている村だ。今年こそは何としても嘘をつかなければ、と思うのこそ当然な感情というべきだ。実際、私の見たところでは、この村はよほど稀な良い村で、善良という点では第一等の村にちがいないと思われるが、それでも幾らかの濁りのあるのを思うと、他の村落のことはおよそ想像してそんなに誤りはないだろう。私は日本でもっとも誇りとなるものの一つは農民だと思っているが、もしこれが悪くなればもう日本は駄目だといっても良い。
「不作不作というが、そんなに不作ですかね。どうもおかしいところがあると思うが。」と私は久左衛門に訊ねてみた。
「そうだのう。このへんはそんなでもないのう。」と彼は小さな声で云う。「新聞が不作不作と書きたてるので、米が騰る。黙っておれば良いのにのう。」
「しかし、村にとってはその方が良いわけだな、僕らには困るが。」
「はははは、それはそうじゃ。」
こんな露骨な話の出来るようになったのは、一つは久左衛門がいつも、私に、高い米を買わぬが良い、無くなれば何とかするというからだ。何とかされるのだと思
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