の水原在の実家に疎開していた石塚友二君から葉書が来る。発信地は福島の郡山からだが、川端康成から鎌倉文庫へ入社の奨めをうけ、目前明らむ思いで今汽車に乗っているところとある。胸に灯火をかかげ、鎌倉へ向って進行していく夜汽車が眼に泛ぶ。だんだん灯の点いていく希望ほど美しいものはない。暗黒の運命の底にも駅駅があり、そこを通過して縫いすすむ夜汽車の窓よ。元気を失うことなかれ。

 どんなことが世の中に起ろうとも、例えば、現在のように世界がひっくり返ろうと、何の痛痒も感じない人物がいるものだ。農家の中には、ときどきそのようなものもある。まるで働く場所そのものの田畑以外は、世界は彼らにとって幽霊のようなものだ。いや、むしろ、日本が敗けたがために彼らは儲けているという苦しみと喜び。しかし、それとはまったく別に、敗戦を喜ぶ苦痛もあるにはある。そして、それらの心が喜びを抱いて現れて来つつあるということの苦しい裏には、人間よりも、人類を愛することだと思い得られる、ある不可思議な未来に対する論法をひっ下げていることだ。今のところ土産はまだ論法であって、人間ではない。世界をあげての人間性の復活に際して、人間性を
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