たると、忽《たちま》ち混乱する考えというもの――習慣になった考えで、習慣ならざることについて考える狼狽さ、これが今の私や人人に起っていて、そのまま有耶無耶に捨て去り、またどこかへかき消えていこうとしている現在というもの。なかなか答案は難儀になった。百五十倍の難儀さだが、しかし、まアせいぜい二十倍ぐらいの難儀さとしてすませて置きたい頭の性格。――しかも、事実は百五十倍の複雑さで展開しているという場合に、人人はいったいいかなることを仕様というのだろうか。
とにかく、人が休息したくてたまらぬときに、そこを見込んで働きたくて仕方のないのがいることも事実である。東京からの通信では、米一升が六十円になったという。誰がどこで幾らで売ったか、いつ、どこへ、幾らで買いに来たか、という噂について、日夜耳を聳立《そばだ》てている農民に、こんな東京の話は聞かされたものではない。十円でびっくりしているものらに、六十円の真相を告げては、――それも、ただほんの噂だけで米の値がそれだけ跳ねあがる喜びに、呆然としているときだ。どこでも、人の集りの中では、話はひそひそ話ばかりである。私らの足音がすると、ぴたりと話は停
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