するのに骨折れた。

 このあたりの農夫は、自分たちを労働者だとは思ってはいない。むしろ、米を製造する製作者で、家主という大将だと思っている。それは小作人でもそうだ。ただ村には共有の山林があって、先祖伝来のこれが財産だが、共同の山林であるから、その所有権を有っている先祖伝来派は利益の別け前に預るが、分家だけは除外されて来ているために、村内の同じ株内でも、母屋と分家との二派の対立が生じている。殊に村外から入って来た別家の久左衛門などは、この限りに非ずである。分家派たちは、村の共同事業のすべてには同じように金を出させられ、山林からの収入の恩恵だけは別というのが、話が分らぬという不平がある。実行組合長は、この点に対しても、別家派の久左衛門と対立し、先祖伝来派の旗頭で、随って本家の参右衛門と共通の権威を主張して譲らない。久左衛門が、田畑や山林で頭を抑えて来るこの強敵に対して、力を養うためには、も早や金銭という現金の所有でたち対う以外に法もない。そこを清江のように、久左衛門の商才を攻撃するのは、やはり伝来派の嫉妬と見ても良いわけで、ここにも、新興勢力の擡頭を抑える無言の蔑視が、労農という神聖な姿
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