態の真っただ中へ、見も知らぬ人の荷物として投げ出すこれら私の荷の行衛については、考え出せばきりなく不安だ。一点たりとも安心出来る部分はどこにもない。しかし、疑心群れ襲って来る怪雲のごとき底から、じっと澄み冴えて来るのは正しい彼の書体であった。それだけは、打ち消しがたくしっかと何かを支えている。篆刻のごとき美しさだ。あれが生の象徴だ。私は東洋を信じる。日本を信じる。人みな美し、とそう思った。
「大丈夫だよ。この荷物は無事に着く。」と私は云った。
「そうかしら、でも、一つ無くしてももう買えないものばかしですのよ。」
「いや、大丈夫だ。」
久左衛門が来た。そして妻にこう云う。
「せつの結婚式が明日なもので、急がしゅうて来れなんだが、何んでも、お前さんたち知らぬものに荷物を頼んだいうことだでのう。心配で見に来た。そんなことはせん方がええぞ。せっかく今までおれはお世話して来て無事だったのに、今になって危いことがあっては、おれも困るでのう。」
とにかく、急なことで一言の相談もせず荷を造ったことは、重重失礼したと妻は詫びを云った。私はまた彼にそんなことを云い出せば、せっかくの参右衛門の好意をも
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