の長い泥路を思うと、ここで荷を軽くして置く必要があったからだった。
どの田の稲も刈られている。見渡す平野の真正面、一里の向うに私たちの今いる姿の良い山が見える。そこまで一文字の泥路を歩くのだが、三日も見ないとやはりもう懐しくなっている荒倉山である。位のある良い山の姿だと思った。
十一月――日
朝起きて炉の前に坐った。ふといつも眼のいく山の上に一本あった楢《なら》の樹が截られてない。百円で売れたのだという。もう渡り鳥の留るのも見られなくなることだろう。
夕暮から薄雪が降って来る。洗いあげた大根の輪に包まれた清江がまだ水の傍に跼んでいる。どの家も大根の白さの中に立った壮観で、冬はいよいよこの山里に来始めたようだ。背をよせる柱の冷たさ。二股大根の岐れ目に泌みこむ夕暮どきの裾寒さ。
十一月――日
見知らぬ十八九の青年が来たので、留守をしている私が出た。身だしなみの良い、眼が丸く活き活きした青年だ。私は用を察し奥から借用の洋傘を持って来てみた。
「これでしょう、家のものがお借りしたの。どうも、どうも。」
先日、駅から雨の中を傘なしで妻と子供が帰って来たとき、後から来た見たこと
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