に疎開者から高値の米を買わされているという滑稽な話など、そんな山奥生活の話も聞えて来てどの炉端も哄笑が起っている。
「都会のものはどれほど金を持ってるものやら、もう分らない。幾らでも持ってるもんだ。」
と、こういう村のものらの結論は今はどこでもらしく、私などの所持金もうすうす皆は見当をつけているのであろうが、中に一軒、疎開者を置いているある農家のもので、うちの疎開者は少しもうちから物を買ってくれたことがないと云ってこぼしているのもある。私としては、他で金を落すものならこの村で落して行きたいと思っているのだが、買いたいと思うと、「おれんとこは商売はしたことがないでのう。」と、暗に私係りの久左衛門に当ったことを云ったりする。
十一月――日
川端康成から三千円送ってくれた。鎌倉文庫の「紋章」の前金だが、一度も催促したこともないのに、見当をつけたようにぴたりと好都合な送金で感謝した。これでひと先ず帰り仕度は出来たとはいえ、終戦以来最初の入金のためか、再び活動をし始めた文壇の最初の一息のようで、貴重な感じがする。
立ちこもった霧雨の中から糸杉、槙の葉、栗の枝が影絵のように浮き出ている
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