「あそこの家のことだと、どうしてみなが、あんなに悪口を云うんでしょうね。お婿さんになる人もさんざんよ。唇がでれりと下っているだとか、むっつりふくれ返って、言葉一つ云やしないとか、相撲取みたいだとかって。それにまた、大地主だっていうふれ込みだのに、蔵がないんだそうですよ。蔵のない地主ってあるものかどうか、というので、ぼそぼそ皆の人悪口いうんですの。」
「云ったところで、もう遅いだろ。あの久左衛門にぬかりはあるものか。」
そういえば、これで三日も久左衛門と私は会っていない。午前中は必ずやって来て、彼に午前の時間をつぶされる苦しさから、やっと逃れた好日だのに、どういうものか、この爺さんの顔が見えなくなるとやはり私は淋しくなる。私にとっては、この久左衛門という老人はこの村で唯一の話の通じる人物になっているのだ。いつの間にか、私は私流の話の通じ口を一つだけこの村に掘りあてて、そこから毎日話の水を流し込んでいたようなものだったが、――おそらく、彼が私の時間を邪魔していたのではなく私が彼の時間を奪うようにしていたのかも分らない。
「あなたと話してると、どういうもんか面白うて面白うて――」
と
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