りすすんで来るような朝の雨だ。峠を越えて魚売りの娘の降りて来る赤襷《あかだすき》。その素足、――参右衛門の炉端へ人が集っている。どうやらこのごろになって、村民は私をも隣組の一員として取扱ってくれるようになって来た。私も観察を止めよう。またそれも出来そうになって来ている。組長がこの集りの炉端へ役場からの報告を持って来て、云うには、――
 国旗は命じたときでなければ出してはならぬ、道路は左側通行の厳守、十四歳以下の子に牛馬を曳かしてはならぬ、武器刀剣ことごとく提出すべし、以上、進駐軍からの命令だとの事だ。そして、組長は、
「これに違犯すれば、どう罰を食うか分らんぞよ。」という。
「そうか、そんなら、こうはしてはおれん。」
 さっそく参右衛門は立ち上り、竹筒から、竿《さお》に縛りつけたままの国旗の小さいのをとり脱した。それから床間にかかった武運長久の掛軸も脱して巻いてしまう。
「やアやア、ひどいことになったわい。天子さまの写真だけは、良かろうのう。」
 と、鴨居の上の御真影を見上げていて、これだけは脱そうとしなかった。
「ああ、負けた負けた。」と、一人がいう。
「供出のさせ方が、おれらを瞞し
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