だけだが、村人の親切さに対してこれ以上、観るという心でいることに耐えられそうにもない。
十月――日
ときどき我ながらいやな気持ちが起って来る。私が疎開者同様のくせにどこか疎開者らしくない気持ちの起ることだ。事実、私はまだ東京の所帯主でここでは私の妻が所帯主になっている。妻と子供が疎開者で私だけはそうではなく、研究心をもって来ていることが、一つの義務だと思うある観想の仕わざのためだ。これでも初めに比べればよほど私も謙遜になっているのを感じるが、妻がこの村に対して感謝しきっている心とは、まだよほど私の方は好ましからざるものがあるようだ。
五月二十四日の空襲のときは群長として役目をすませ、私でも町会から十円の賞を貰って東京を立った。立つときも留守居のHとIとに依頼し、炭焼を研究して来たいと思うがすぐ帰ると云って出て来たので、私には疎開者だと思う気持ちはいまだにない。それが悪く邪魔をしている。倦くまで研究心を失いたくはないと思う虚剛と、人間らしからざる観察者の気持ちを伏せ折りたくもあって、個人の中のこの政治は甚だ調和を失って醜い。私はまだ文学に勝ってはいないのだ。先ず第一にこれに打ち勝
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