れちゃ、これゃたまらないという気がして来ましたね。けれども、そうかと云って、生徒に君たちはファッショになれとは、どうしても云えませんからね。全く帰ったって、これじゃ生徒に教えようがなくなった。困ったことになって来た」
 とつくづく梶に腕組みしながらこぼしたことがあった。しかし、思想は民族から離れてあり得ようがない。論理の国際性の重要なことは梶とて充分知っているが、それ故《ゆえ》に知性は国際的なものだとは限っていない。民族の心理を飛び放れた科学者たちの知性が、国際性を何ものより最上としている現代の欠陥は、各民族の住する自然を同一視している彼らの理想の薄弱なところにあるのだと梶は思った。事実、自然の法則を発見する科学者たちの方法が各国共通の論理を根幹としている理由によって、その論理の対象とする自然と歴史の運動をも各国共通の自然と混同しているところに、現代という時間を忘れた知性の不明があると梶は思う癖があった。
 梶がヨーロッパへ旅立つ前からうっかり民族という言葉を用いようものなら、ひどく知識階級のある種のものたちから矢を受けた。けれども、この明瞭《めいりょう》な現実の根柢《こんてい》である
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