の線も、異国の風景を眼にして来た梶には殊の他《ほか》奥ゆかしく、遠いむかしに聞いた南無阿弥陀仏《なむあみだぶつ》の声さえどこからか流れて来るように思われた。
梶はこの風景に包まれて生れ、この稲穂に養われて死ぬものなら、せめてそれを幸福と思いたかったのが、今にしてようやくそれと悟った楽しさを得られたのも、遅まきながら異国の賜物だと喜んだ。全くこの独特な小さい稲穂の中で、押し合いへし合い捻《ね》じ合いつつ、無我夢中に成長して来たわれらの祖先の演劇は、何ものの中にも血となり肉となりしてこり塊《かたま》っていることこそ争い難い事実であった。
笑わば笑え。真正真銘の悲劇喜劇もこれに増した痛烈な事件はあるまい。――こう梶の思う心の中で、ヨーロッパの知性に飛びついている顔が、足をぶらぶらさせていったい何を笑っているのか判然としなかった。
世の中はぜんたいどこへ行くのであろう。――深夜眠れぬままにときどきこのように思ったパリーでの瞑想《めいそう》も、も早や梶から形をとり壊《こわ》して安らかに鎮《しずま》って来るのであった。このようなときには、梶に突き刺さって来た敵の槍《やり》さきも、蹴脱《けはず
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