た膝の上へ病人を伏せて次の帽子を待っている。すると、また帽子が廻って来る、また滴を落すという風に幾回も繰り返しているうちに、私には遠く清水の傍からつぎつぎに掛け声かけながらせっせと急な崖を攀じ登って来る疲れた羅漢達の月に照らされた姿が浮んで来ると、まるで月光の滴りでも落してやるかのように病人の口の中へその水の滴を落してやった。
入力者注
・「時間」は、昭和六(1931)年四月『中央公論』に発表。同年四月白水社『機械』に初収。
・河出書房新社『定本 横光利一全集 第四巻』(昭和五十六年刊)を底本とした。
・旧かなづかいは現代かなづかいに、旧字体は新字体に改めた。
・「茫茫」など漢字の繰り返しは「茫々」などと改めた(「佐佐」は除く)。
・以下の漢字はひらがなに改めた。
云う→いう、此の→この、了う→しまう、恰も→あたかも
テキスト入力者:佐藤和人
校正者:かとうかおり
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