よく落第かナ?」
「勿論及第しおつた、」と毬栗君は大得意で有つた。
「君、及第しましたか?」と新聞配達の小説家は眼を※[#「目+爭」、第3水準1−88−85、50−9]つた。
「諸君、最《も》う馬鹿にし給ふな、片岡禅吉は最早托鉢坊主ぢやないよ、明日辞令を請取《うけと》れば台湾総督府の巡査片岡禅吉ぢや。大いに新領土の経営をして日本国家に報ゆる覚悟ぢや。」
「壮快々々。一番片岡君の為《た》め祝宴を開いて万歳《まんざい》を称へやう、」と伊勢武熊は傲然として命令するやうに、「そこで会場は横町の牛店として駿河君は実業家ぢやから会費の半分を負担し、亀井君は懸賞小説が当選るさうぢやから登用人材の片岡君と共に残る半額を負担すべし。処で俺は当分志を得んから諸君の御馳走になるのぢや。あッはッはッ……。」
底本:「日本の名随筆 85・貧」作品社
1989(平成元)年11月25日第1刷発行
1991(平成3)年9月1日第3刷発行
底本の親本:「社会・百面相」岩波文庫、岩波書店
1953(昭和28)年2月
入力:渡邉 つよし
校正:門田 裕志
2001年9月20日公開
2003年5月25日修正
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