私の母
堺利彦
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)琴《こと》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)私の次兄|乙槌《おとつち》と
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)不器用なたち[#「たち」に傍点]として
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私の母、名は琴《こと》、志津野《しづの》氏、父より二つの年下で、父に取っては後添えであった。父の初めの妻は小石氏で、私の長兄平太郎を残して死んだ。そのあとに私の母が来て、私の次兄|乙槌《おとつち》と私とを生んだ。私の母が私を生んだのが四十二歳の時、兄を生んだのが三十八歳の時だったはずだから、思うに、母は三十六、七歳の時、堺家にとついだものだろう。
かように母はずいぶんの晩婚であった。それには理由がある。もっとも、そんなことは、私が大人《おとな》になってから独りで自然に考えついたことで、誰に話を聞いたのでもなく、また少年の頃は全く何の気もつかずにいたことである。母は甚だしいジャモクエであった。その頃の人としては、「キンカ上品、ジャモ柔和」というコトワザがあった位で、一通りのジャモなら一向問題にならなかった
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