ある。
 私の曾つて詠んだ一首に、
[#天から3字下げ]わがこころ澄みゆく時に詠む歌か詠みゆくほどに澄めるこころか
 といふのがある。
 まつたく歌に詠み入つてゐる瞬間は、普通の信者たちが神佛の前に合掌禮拜してゐる時と同じな、或はそれより以上であらうと思ふ法悦を感じてゐるのである。
 おそらく私はこの歌の道を自分の信仰として一生進んでゆくであらうとおもふ。さうしていま自分の前に横たはつて居る歌の道はいよ/\寂しく、そしていよ/\杳《はる》かに續いてゐるのを感ずるのである。



底本:「若山牧水全集 第七卷」雄鷄社
   1958(昭和33)年11月30日発行
入力:柴 武志
校正:浅原庸子
2001年3月20日公開
2005年11月12日修正
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