』といふ。見れば二人とも袂にいつぱい赤い小さな粒々の實を摘みためてゐるのであつた。
 松原で咲く花のうち、最も早く咲いた木苺の花は既に散つて、こまかな毛を帶びたその青い實が見えて來た。そして森なかの常磐木にからんで枝垂れてゐる通蔓草《あけび》の花がいま盛りである。桃畑であつた時のまゝに置いてある家の垣根にもこの蔓草はいつぱいにからんでゐる。(四月十九日)



底本:「若山牧水全集第八巻」雄鶏社
   1958(昭和33)年9月30日初版1刷
入力:柴武志
校正:小林繁雄
2001年2月3日公開
2004年8月30日修正
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