知つたのださうだ。そして、
「いま自轉車を走らせましたから迫つ附けU―君も此處へ見えます。」
 といふ。
「アヽ、さうですか。」
 と答へながら、矢つ張り呼び留めてよかつたと思つた。U―君もまた創作社の社友の一人であるのだ。この群馬縣利根郡からその結社に入つてゐる人が三人ある事を出立の時に調べて、それぞれの村をも地圖で見て來たのであつた。そして都合好くばそれ/″\に逢つて行きたいものと思つてゐたのだ。
「それは難有う。然しU―君の村は此處から遠いでせう。」
「なアに、一里位ゐのものです。」
 一里の夜道は大變だと思つた。
 やがてそのU―君が村の俳人B―君を伴れてやつて來た。もう少しませた人だとその歌から想像してゐたのに反してまだ紅顏の青年であつた。
 歌の話、俳句の話、土地の話が十一時過ぎまで續いた。そしてそれ/″\に歸つて行つた。村までは大變だらうからと留めたけれど、U―君たちも元氣よく歸つて行つた。

 十月廿二日
 今日もよく晴れてゐた。嬬戀以來實によく晴れて呉れるのだ。四時から強ひて眼を覺まして床の中で幾通かの手紙の返事を書き、五時起床、六時過ぎに飯をたべてゐると、U―君がに
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