の中にいて、窓からその手紙を庭へ抛げおとし、そしてホテル内の一室からすぐに帳場へ電話をかけたものだろうと思っていたのだ。しかし帳場では案に相違して、その電話はホテル外から懸ってきたんだという。折角の帆村の考えも、そこで全く崩れてしまうよりほかなかった。帆村はそこで一旦電話を切った。
糸子は、まだ何も知らずスヤスヤと睡っている。帆村はソッと近づいて、彼女の軟かな手首を握ってみた。
「ウム、静かな脈だ。心臓には異常がない。だがどう見ても、何か睡眠剤のようなものを嚥《の》まされているらしい」
なにゆえの睡眠剤だろう。
もちろんそれは、糸子をここへ搬びこむためにそうするのが便利だったというわけだろう。すると糸子たちが、このホテルに入ってくるのを誰か見た者がありそうなものだ。それを帳場へ行って聞き正したいと思った。
彼はすぐにも帳場の方へ下りてゆきたかったけれど、それは甚だ気懸りであった。この部屋には、糸子がひとりで睡っているのである。もし彼が室外に出て鍵をかけていったとしても、さっき煙のようにこの部屋に闖入した蠅男の一味は、えたりかしこしと帆村の留守中に再びこの部屋に押し入り、糸子に危
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