出て来たのは、一通の西洋封筒だった。さっき帳場で渡されてきた宛名も差出人の名前もない変な手紙だ。
彼はそっと封筒をナイフの刃で剥《は》がしてみた。その中からは新聞紙が出て来た。新聞紙を八等分したくらいの小さい形のものだった。
新聞紙が出て来たと見るより早く、帆村は蠅男の脅迫状を連想した。拡げて調べてみると、果然活字の上に、赤鉛筆で方々に丸がつけてある。これを拾って綴ってゆくと、文章になっていることが分った。
「ウム、やはり蠅男の仕業だな」
赤い丸のついた字を拾ってゆくと、次のような文句になった。
「――この事件カラただちに手をひケ、今日まデワ大メに見テやる、その証コに、イと子を安全に返シテやる、手を引カネバ、キサマもいと子も皆、いのちがナイものと覚悟セヨ、蠅男より、ほムラそう六へ――
果然、蠅男からの脅迫状だった。
帆村探偵に、この事件から手を引かせようという蠅男の魂胆だった。
帆村は、この新聞紙に赤丸印の脅迫状を読んでいるうちに、恐怖を感ずるどころかムラムラと癪《しゃく》にさわって来た。
「かよわい糸子さんを威《おど》かしの種に使おうなんて、卑怯千万な奴だ」
それに
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