であることに間違いはない。
さあ、すると、ベッドの上に寝ているのは一体何者だろう。
帆村の手は、音もなく滑るように、懸けてあるオーバーの内ポケットの中に入った。そこには護身用のコルトのピストルが入っていた。彼はそれを取出すなり、二つに折って中身をしらべた。
「……実弾はたしかに入っている!」
こうした場合、よく銃の弾丸が抜きさられていて、いざというときに間に合わなくて失敗することがあるのだ。帆村はそこで安心してピストルをグッと握りしめた。そして抜き足差し足で、ソロソロベッドの方に近づいていった。
ベッドの上の人物は、死んだもののように動かない。
帆村は遂に意を決した。彼は呼吸《いき》をつめて身構えた。ピストルを左手にもちかえて、肘をピタリと腋の下につけた。そしてヤッという懸け声もろとも一躍してベッドに躍りかかり、白いシーツの懸った毛布をパッと跳ねのけた。そこに寝ているものは何者?
ピストルをピタリと差しつけたベッドの上の人物の顔? それは何者だったろう?
帆村の手から、ピストルがゴトリと下に滑り落ちた。
「おお――糸子さんだッ」
謎! 謎!
なんという思い
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