蠅男
海野十三

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)蠅男《はえおとこ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一種|香《かん》ばしいような

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「てへん+堂」、第4水準2−13−41]《どう》と床上に
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   発端


 問題の「蠅男《はえおとこ》」と呼ばれる不可思議なる人物は、案外その以前から、われわれとおなじ空気を吸っていたのだ。
 只《ただ》われわれは、よもやそういう奇怪きわまる生物が、身辺近くに棲息《せいそく》していようなどとは、夢にも知らなかったばかりだった。
 まことにわれわれは、へいぜい目にも耳にもさとく、裏街の抜け裏の一つ一つはいうにおよばず、溝板《どぶいた》の下に三日前から転がっている鼠《ねずみ》の死骸《しがい》にいたるまで、なに一つとして知らないものはないつもりでいるけれど、しかし世の中というものは広く且つ深くて、かずかずの愕《おどろ》くべきもの[#「もの」に傍点]が、誰にも知ら
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