であった。水田検事から詳しい説明がのべられると、村松検事の無罪説を信じていた帆村たちも、それでも村松検事は塩田先生殺しに無関係であるとはいえなかった。
(しかし、これは何か大きな間違いがあるのに違いない)
帆村はあくまでそれを信じていた。
でも、内部から鍵をかけた密室の殺人事件――塩田先生は文鎮で脳天をうち砕かれ、村松には凶器である文鎮を握っていた証拠がある。窓は内から鍵こそ掛っていなかったが閉っていたそうである。もし窓が明いていたとしても、誰が窓の外から侵入して来られるだろう。なにしろこの法曹クラブ・ビルというのは、スベスベしたタイル張りの外壁をもって居り、屋上には廂《ひさし》のようなものが一間ほども外に出ばっていたし、人間|業《わざ》では、到底《とうてい》窓の外から忍びこむことが出来そうもなかった。
すると、村松検事の犯行でないという証明は、ちょっと困難になるわけだった。
帆村は、水田検事に頼んで、村松にひと目会わせてくれるように頼んでみたけれど、この際のこととて、それもあっさり断られてしまった。
死闘宣言
帆村探偵は、彼をしきりと慰めてくれる正木署長とも別れ、ただひとり附近のホテルに入った。
糸子の泊っている宝塚ホテルへ帰ろうかと思わぬでもなかったけれど、それよりは村松検事の身近くにいた方が、なにか便利ではないかと思ったからだ。
「どうすれば、村松さんを救いだせるだろうか」
冷たい安ホテルの一室の、もう冷えかかったラジエーターの傍に椅子をよせて、帆村はいろいろと、これからの作戦を考えつづけた。だが一向に、これはと思ううまい考えも浮んで来なかった。
そのうちに彼は、コクリコクリと居眠りを始めた。昼間の疲れが、ここで急に出て来たのであろう。
ガタリ。
突然大きな音がして、帆村はハッと眼ざめた。どうやら廊下の方から聞えたらしい。
深夜の怪音の正体は何? 何者かが廊下の窓を破って、ホテルのなかに忍びこんでくるようにも感じられた。
帆村は素早く室内のスイッチをひねって、室内の灯りを消した。それからポケットからピストルを出して手に握ると、人口の扉の錠を外した。そして床に腹匍《はらば》いせんばかりに跼《かが》んで、扉をしずかに開いてみた。もし廊下に何者かの人影を見つけたら、そのときはピストルに物を云わせて、相手の足許を射抜くつもりだった
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