で見たいね。試写室はどうだろう」
試写室というわけにも行くまい。私は考えて、彼をフィルムの編集室へ連れてゆくのが一番簡単であり、そして自由が利くと思った。――それを云うと、帆村は満足げに、大きく肯いた。
フィルム編集室は、スタディオからかなり離れたところにあった。そこに働いている連中とは前々からよく知り合っていた。
「桐花さんのフィルムを映してみせてくれないか、この人が見たいというので……」
というと、木戸という編集員が出てきて、
「じゃあ、いま撮影中だけれど『銀座に芽《め》ぐむ』の前半を見せましょうか」と気軽に引受けてくれた。
帆村と私とは、狭い編集用の試写室の中に入って黒いカーテンを下ろした。
「スタディオが出来て、録音がとてもよくなりましたよ……」
木戸氏は映写函の中から、私たちに自慢をした。やがて小さいスクリーンに、ぶっつけるような音が起ると、現代劇「銀座に芽ぐむ」が字幕ぬきでいきなり映りだした。
帆村は私の隣りで熱心に画面を見ているようだったが、三原玲子はなかなか現われてこなかった。そして暫くすると口を私の耳のところに寄せて囁《ささや》いた。
「ちょっと可笑しいこ
前へ
次へ
全37ページ中18ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング