の感度が一様《いちよう》にいってないので、困っていることもあるんだ」
 電波は長波《ちょうは》、中波《ちゅうは》、短波《たんぱ》と、だんだん波長が短くなってきて、もっと短くなると超短波《ちょうたんぱ》となり、その下は極超短波《ごくちょうたんぱ》となる。そのへんになると赤外線《せきがいせん》の性質を帯《お》びて来る。一センチの何千万分の一となると、もう電波であるよりも赤外線だ。そうなると、装置はますますむずかしさを加える。
「なんか出て来たよ。しかしさわがないでくれたまえ」
 隆夫が昂奮《こうふん》をおしつけかねて、奇妙な声を出す。
 一同の顔が、さっと紅潮《こうちょう》して、隆夫の顔に集まる。
 隆夫は手まねで三木に空中線の向きや距離をかえさせる。そしていそがしくスイッチを切ったり入れたりして、その目は計器の上を走りまわる。
「これらしい。これがそうだろう」
 隆夫はひとりごとをいっている。
「ああッ、飛ぶ、飛ぶ、赤い火がとぶ……」
 とつぜん、高い女の声。
 名津子《なつこ》が口を聞いたのだ。彼女は目がさめたものと見え、むっくりと床から起上ろうとして、母親におさえられた。
「名津ちゃん。おとなしくしなさい。母さんはここにいますよ」
 母親は涙と共に娘をなだめる。
 それからの三十分間は電波収録班大苦闘《でんぱしゅうろくはんだいくとう》の巻《まき》であった。なにしろ目がさめた名津子は、好きなように暴れた。弟の三木も何もあったものではなく、空中線はいくたびか折られそうになった。母親と三木は、そのたびに汗をかいたし、隆夫たちははらはらしどおしだった。そして予定よりも早く実験を切りあげてしまった。
 三木に別れをつげて、残る三人の短波ファンは、そこを引揚げた。
 三人は隆夫の実験小屋へ機械をもちこんで、しばらく話し合った。すると、二宮がしかつめらしい顔をして、こんなことをいいだした。
「人間のからだが生きているということはね。からだをこしらえている細胞の間は、放電現象が起ったり、またそれを充電したり、そういう電気的の営《いとな》みが行われていることなんだとさ。だから三木の姉さんみたいな人を治療するのには、感電をさせるのがいいんじゃないかな。つまり電撃作戦《でんげきさくせん》だ」
「それは電撃作戦じゃなくて、電撃|療法《りょうほう》だろう」
「ああ、そうか。とにかく高圧電気
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