うとしているのだ。うっかり油断をしていたが最後、悔《く》いて帰らぬ破滅が来るばかりだった。ああ戦慄《せんりつ》すべき大計画! あのとき密書が自分の手に入らなかったら……」
 帆村は慄然《りつぜん》として、隣席の牧山大佐を顧《かえり》みた。しかし大佐の姿は、もうそこにはなかった。その代り受話器の中から儼然《げんぜん》たる号令が聞えてきた。
「総員、配置につけッ!」



底本:「海野十三全集 第4巻 十八時の音楽浴」三一書房
   1989(平成元)年7月15日第1版第1刷発行
初出:「つはもの」
   1934(昭和9)年〜1935(昭和10)年頃
※底本は、表題の「間諜」に「スパイ」とルビをふっています。
入力:tatsuki
校正:まや
2005年5月6日作成
青空文庫作成ファイル:
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