壁際に倒れている第二の犠牲者のところへ近づいた。
「オイッ、しっかりしろ!」
「赤毛のゴリラ」の上衣《うわぎ》を開くと、彼の胸には先刻《さっき》怪人からソッと渡された簡易防弾胸当《かんいぼうだんむねあて》が当っていた。しかし弾丸《たま》は運わるく胸当の端を掠《かす》めて、頤の骨にぶつかったらしく、頸のあたりを鮮血が赤く染めていた。その衝動が激しかったのか、彼は気絶していた。しかし心臓の鼓動は指先にハッキリ感ぜられた。
「このままでは、息を吹きかえすと同時に昏睡《こんすい》してしまうぞ。危い危い」
そういって怪人は黒衣の下からマスクのようなものを出し、ゴリラの顔面に被せてやった。そしてそれが済むと、ドンドンと背中を打って、
「おい、目を覚せ、目を覚すんだ!」
と叫んだ。
激しい刺戟《しげき》に「赤毛のゴリラ」はやっと気がついたか、ウーンと呻《うな》り始めた。
「オイ『赤毛』君。――しっかりするんだ。愚図愚図《ぐずぐず》していると、俺達は死んでしまうぞ」
怪人は気が気ではなかった。隠し持ちたる毒瓦斯を放ったのはよいが、首領を逸してしまっては危険この上もない。首領は何時彼の背後に迫っ
前へ
次へ
全78ページ中25ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング