。しかしじゃ、わしのように十五もの会社の重役をしている忙《いそが》しさでは、そんなことは到底出来べきではないのじゃ。」
小僧「そんなことはございません。たっぷりお有りですよ。」
重役「ないッ! 忙しいのを知らんか、君は。」
小僧「では申上げましょう。先生は毎晩お寝《やす》みになりますが、あのときは何かお仕事をなさいますか。無論なさらないで、ながながと伸びていらっしゃいましょう。私の申すのは、あの時間です。すくなくとも五六時間は有りましょう。……そこであの紫外線発生装置をベッドに仕掛けて置くのでございますよ。特別のベッドですが、これを用いてお寝みになりますと、毎晩、適当の時間に紫外線が身体に当って、知らず知らずのうちにお丈夫になるし、時間も損をしないというので……。」
重役「ウウン、そいつはいい考えじゃ。よオし、その紫外線発生ベッドというのを買おうじゃないか。一台いくらじゃ。」
小僧「へえへえ、どうも有難うございます。……エエ少々お高くて、一台二百円でございます。」
重役「二百円で、人生六十からナラ安い、よオし、至急十五台ほど持って来てくれ。」
小僧「十五台? そんなに、どうなさいますんで……。」
重役「斎藤内閣の諸公に贈るのじゃ。」
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ホンモノの珍発明集
小説より奇なる実話あり。空中楼閣《くうちゅうろうかく》的模擬発明よりも奇なるホンモノの発明も亦《また》、無からずして可《か》ならん哉《や》、乃《すなわ》ち、商工省特許局発行の広報より抜粋《ばっすい》して次に数例を貴覧に供せんとす。夫れ一言半句《いちごんはんく》も疎《おろそ》かにすることなく、含味熟読《がんみじゅくどく》あらむことを。
パチンコの発明
昭和二年実用新案広告第一一六七七号(類別第一十五類五、銃弓及射的玩具)――出願人、東京府下本田村立石、×田×次郎氏。
「登録の請求範囲」というのを見ると、パチンコの構造というのが、次のように鹿爪らしく書いてある。
図面ニ示ス如ク、支持|桿《かん》(1)(1)ノ上端ニ、溝(10[#「10」は縦中横])(10[#「10」は縦中横])ヲ設ケテ、「ゴム」条ノ両端ヲ挿入シテ、木|螺子《ねじ》(9)(9)ニテ締着シ、支持桿ニ穴ヲ穿《うが》チ、該《がい》穴ニ線条(7)ヲ刻セル中空廻転子(6)ヲ緩通シタル軸(5)ノ両端ヲ押込ミ、両支持桿(1)
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