どこなのでしょうか。
「ミドリちゃんは、どうしたんだろう。やはり、あのわる者につかまっているんだろう。かわいそうに」
 高一はミドリのことをおもうと、どうしてこのままじっとしていられましょう。しかし、なわはかたくむすばれて、とけそうもありません。
 くやしなみだをぽろぽろこぼしているところへ、そとに足音がきこえ、こっちへ近づいてきます。なに者がやってくるのでしょう。
 すると、高いところにあいていた窓に、一つの顔があらわれました。それは少年の顔です。みたこともない顔ですが、大きな口をあいてよだれをながしていました。
 ポンちゃんというその少年は、わる者の仲間ですから、とても、高一をたすけてくれません。
 高一は、なにをおもいついたか、いつも腰にさげている鳩をよぶ笛を、ポンちゃんにあげるから、もっておゆきといいました。すると、ポンちゃんは大よろこびで、屋根のやぶれ目から、柱つたいにするするとおりてきて、高一の腰についている笛をとると、また、そとにでてゆきました。
 ほう、ほう、ほう。
 笛は、そとでさかんになっています。ポンちゃんがおもしろがってふいているのです。
 すると、それから一時間ほどたって、窓のそとに、とつぜん、たくさんの鳩の羽ばたきがきこえてきました。高一はにっこりとしました。


   ハグロとアシガラ


 世界一のかしこい鳩をつかう鳩つかいとは、まっかなうそで、これこそ、おそろしいスパイ団の団長がばけていたのでありました。高一は、体をぐるぐるまきにされ、穴ぐらのなかにおしこめられてしまって、もう、ミドリを助けるどころではなくなりました。そこで、かんがえたあげく、もっていた笛を、わる者仲間のポンちゃんにやりますと、ポンちゃんはよろこんで、それを、ほう、ほう、ほうとさかんにふきならしました。そのうちに穴ぐらのあかり窓のところにきこえる羽ばたき!
 高一は、ポンちゃんに笛を吹かせてから、この羽ばたきの音を、どんなにか、まっていたのです。
「しめた! ぼくの家の鳩がきたぞ」
 きゅうに、にこにこ顔になった高一は、あかり窓の下にすりよって、ぴいぴいと口笛をふきならしました。
 すると、くう、くう、くうとなきながら、ばたばたと羽ばたきして穴ぐらにとびこんできたのは、まさしく、高一のかわいがっていたハグロとアシガラという二羽の伝書鳩でした。
 鳩は、高一の肩にとま
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