ずです。はやく助けて……」
「ばんざあい」
と、大きなこえがおこりました。どうなったかと心配していた高一少年や、高一のお父さまで、お国のためはたらいている秋山技師の二人を助けだすことができたし、そのうえスパイ団のわる者も、おおぜいつかまえることができたのですから、大手がらでした。
「へんだなあ――」
良太おじさんが、首をかしげました。
「なにがへんなのですか」
「だって、電気鳩が、このほら穴にとびこむところをみたのに、いまこうしてさがしてみてもいないじゃないか」
「おかしいね。これはどうやら、ほかにぬけ道があるらしいぞ」
にげた団長
「おじさん。お父さまをくるしめていたスパイ団の団長がみえないよ」
と、高一少年がさけびました。
「なに団長が……。うむ、いよいよぬけ道があることにきまった。さあ、さがすんだ」
そのとき愛犬マルは、なにおもったか耳をぴんとたて、かたわらのおおきい岩のうえにとびあがり、そのむこうにすがたをけしました。まもなく、わんわんとマルのほえるこえ!
「それ、ぬけ穴だっ」
と、みなのものも岩をとびこえてみると、なるほど下につづいたぬけ道がありました。いそいでいってみると、ぴかりと光るもの――電気鳩です。マルにおいかけられています。
しかも、そのそばには、団長が黒い箱をせおってにげてゆきます。
「おいまてっ――」
と良太おじさんたちは、一生けんめいにおいかけましたが、ぬけ穴を出たところが、がけの下でした。スパイの団長は、そこにこしらえてあった、なわばしごをつたってがけの上にあがり、そして、そのなわばしごを上にひきあげてしまったものですから、いくら強い憲兵さんたちでも、がけをのぼることができません。
「ちえっ、ざんねんだ。もうひといきでつかまるところだったのに」
憲兵さんたちは、たいへんくやしがりました。高一もざんねんですが、はしごがなければのぼれないところだからしかたがありません。
こうして、電気鳩と、黒い箱をせおったスパイの団長とは、どこかへにげてしまいました。
その後、電気鳩はどこへいったものか、いっこうにみかけませんでした。
高一の鳩たちは、またもとのように小屋のまわりに、たのしくあそぶようになりました。
高一のお父さまも安心して、あらためて、大事なご用の旅におでかけになりました。
そのうちに、鎮守《ちんじゅ
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