《じょしゅくん》を拝《おが》み倒《たお》して、アルプス山中へ飛行機で案内して貰った。
 博士は、白い天幕《テント》を張って、悠々と作業をつづけていた。
 百トン戦車かと思うような巨大な鋼鉄《こうてつ》の怪車輌《かいしゃりょう》が数百台、博士の握るハンドル一つによって、電波操縦でギリギリと前進する。その怪車輌が崖《がけ》にぶつかると、爆音をあげて崖はたちまち消え失《う》せる。その代り一本の茶褐色《ちゃかっしょく》の煙がすーっと立ちのぼり、轟々《ごうごう》たる音をたてて天空《てんくう》はるかに舞いあがっていく。その有様は、竜巻《たつまき》の如くであった。
 これは人工竜巻とも名付くべきものである。博士は、この人工竜巻を何のために起しているか。それをいう前に、この人工竜巻がどんなものであるかということを説明する方が、順序であろう。
 人工竜巻は、アルプス山を削《けず》りとった岩石が天空高く舞い上っていく姿である。山を削るには、かの怪車輌がある。この怪車輌は、能率三千パーセントと称せられた原子変換《げんしへんかん》エネルギーを利用した起重動力発生機《きじゅうどうりょくはっせいき》であって、さて
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