いけない。
「煙幕放出用意。第一号から第五号まで、安全※[#「合/廾」、第3水準1−84−19]《あんぜんえん》抜け」
「はい」
 オルガ姫は、忠実だ。
「はい。第一号から第五号まで、安全※[#「合/廾」、第3水準1−84−19]抜きました」
「よろしい。上昇始め」
「はい、上昇始めます。深度八十、七十六、七十四、七十二……」
 オルガ姫は、早口で深度を読む。
「……深度十二、十一、十、九、八……」
 深度が五となったとき、私は煙幕放出を号令した。そして直ちに、逆に降下を命令した。
 ぶすッ、しゅう、しゅう。
 はち切れたような音だ。煙幕筒の第一号から第五号までが、海面で口を開いたのであった。これにより、おそらく十秒とたたないうちに、クロクロ島は、灰色の煙幕でもって、すっかり隠されてしまうはずであった。
 わが潜水艇は、反転して、石のごとく、海底めがけておちていく。
 私は耳をすましていた。米連艦隊の砲撃が、ぱったりと杜絶《とだ》えたのを確認した。
(うまくいったらしい。とうとう、クロクロ島は、煙幕の中に、見えなくなったのにちがいない)
 私はほっと一安心して、なおも海上の様子をうかが
前へ 次へ
全156ページ中91ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング