あたりをさぐった。
「なんにもない。ハンドルもないのだ」
 一大事だ。私はいつの間にか、極秘《ごくひ》の潜水艇の外に出ていたのである。
 私は、そっと両手をついて、頭をあげた。
「おッ、起きあがれるぞ!」
 私は起き上った。だが、そこにも、次の大きなおどろきが待っていた。私の足の下に、踏んでいるはずの大地が感ぜられないのであった。
(足の裏が、無感覚になったのであろう)
 そう思いながら跼《かが》んで、足の下をさぐった。このときぐらい、私が愕《おどろ》いたことはない。足の下には、なんにもない。床もなければ、大地もない。それは全く、空っぽの空間だけがあったのである。
 名状しがたい大戦慄が、私の背中を、匐《は》いのぼった。怪また怪!


   空間の大戦慄《だいせんりつ》――おそるべきX大使の魔力


 さすがの私も、この恐怖の一瞬に、全身からありとあらゆる精力が、一度に抜け去ったように思った。
 が、最後の一歩手前で私は、もしやと考えた。
「これは、夢を見ているのではないか」
 私は、そういうときに誰もがするように、われとわが頬を、指さきで、つよくひねった。
「あ、痛い!」
 頬は痛か
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