久慈なら、たしかに、このクロクロ島をうまく使いこなせるだろう。
 だが、そのとき私は、一つ心配なことを思い出した。
 それは外でもない。昨夜あらわれた怪人X大使のことだった。あのような大胆不敵な曲者に、このクロクロ島を再訪問されては困ってしまう。なにかいい方法はないか。
 私は、しばらく考えた結果、一つのことを思いついた。それは、クロクロ島の入口に、強烈な磁石砲《じしゃくほう》をおくことだ。あのX大使が、入って来ようとすると、この磁石砲の磁場《じば》が自動的に働いて、X大使の身体を、その場に竦《すく》ませる。そのとき一方から、ヘリウム原子弾を雨霰《あめあられ》のようにとばせて、X大使の身体の組織をばらばらにしてしまう。そうすれば、いかなる怪人X大使であろうと、たいてい参ってしまうであろう。
 私は、磁石砲を入口に据付《すえつ》けるために、貴重な三十分ばかりの時間を費《ついや》し、それが終ると、久慈にくわしく注意をして、名残《なごり》惜しくもクロクロ島を出掛けたのであった。


   魚雷潜水艇《ぎょらいせんすいてい》――身動き出来ぬ船室


 私は、あいかわらず、忠実な部下である人造人
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