年先が分る器械」のことにしろ、「お化け地球」のことにしろ、どっちも、われわれの想像を越えた話である。
そういう話をもちだして放送するとは、われわれを嚇すことを目当てにやったものに、ちがいない。いよいよ油断ならないのは、その怪放送者である。
私は、沈思黙考《ちんしもくこう》すること一時間あまり、ついに肚《はら》をきめるに至った。
(よオし、たとえいかなる犠牲を払おうとも、怪放送者の正体をつきとめないではおかないぞ!)
私は、オルガ姫に命じて、再び怪放送を自動的に受信する装置を、仕掛けておくように命じた。
それがすむと、私は、自ら秘密中継送信機の前に立ってまず真空管に火を点じた。
その大きな硝子球《ガラスきゅう》は、器械囲いの中で、ぼーっと明るくなった。異状なしである。私は、送信機全体に、スイッチを入れた。そして、マイクを手にとったのである。
「やあ、久慈《くじ》君か。こっちは私だが、なにか変った話はないか」
「おお、お待ち申していました。たいへんなことを、聞きこんだのです。いよいよ汎米連邦《はんべいれんぽう》は戦争を決意したそうです。連邦の最高委員長ワイベルト大統領は、今から一時間ほど前に、極秘のうちに、動員令に署名を終ったそうです」
「そうか。とうとう、開戦か」
「そうです。またまた世界戦争にまで発展することは、火をみるより明らかです。ああ、今度はじまれば、実に第三次の世界大戦ですからね」
と、久慈のこえは、興奮のあまり、慄《ふる》えを帯びている。
「一体、汎米連邦には、一切の戦備ができ上っているのかね」
と、私はたずねた。
「もちろんですとも。この二十幾年、汎米連邦は、ばかばかしいほど大仕掛けの戦備をととのえているのです。
近来《きんらい》汎米人以外のいかなる外国人も、入国を許可しませんから従って、どんなに大仕掛けの戦備ができているか、あまり外へは、洩《も》れないのです。しかし、こうして、国内に居る者には、たえず目にふれています。全くばかばかしいの一語につきますよ。
旧北米合衆国のワシントン州のごときは州全体が、一つの要塞のように見えるのです。欧弗同盟《おうふつどうめい》国にとっては、相当手強い敵ですよ」
大西洋をはさんで、東に欧弗同盟国、西に汎米連邦――この二つの国家群は、二十余年以来睨み合いをつづけているのであった。
「そうか。今度は、いよ
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