端どころか、同一点となってしまうのだ。
二次元生物には、紙が二つに折られたというような三次元的現象を想像する力がない。だから、人間から見れば、紙を二つに折るなどということは、すこぶる簡単なことなのであるが、二次元生物にとっては、これが魔術としか思われないのだ。
オレンジ号が、いきなり宙吊りになったことや、また艦体の半分が見えなくなったことなども、それと同様の説明がつく。つまり、金星超人の手によって、オレンジ号は、四次元的に扱われたのである。われわれ三次元生物から見れば、魔術としか思われないその現象も、彼等金星超人より見れば、何の苦もなき他愛のない悪戯《いたずら》にすぎないのであろう。
鬼塚元帥の電文によると、わが日本においても、世界に魁《さきが》けて、すでに、四次元振動現象の研究がすすめられていたということで、たいへん結構なことであるが、金星においては、更にそれよりももっと以前から、その研究が完成しており、四次元振動を自由に使いこなしていたのである。金星超人が、地球人間よりも、はるかに智能においてすぐれていることは、これでよく分った。
鬼塚元帥は、私を日本要塞より締め出しておきながらも、しきりに私の殊勲をほめてくれる。しかしどう考えても、締め出しは、恐れ入るの外ない。
それと同時に、私は、これまで知らないこととはいいながら、よくもまあかの恐るべき金星超人X大使と対等に張り合っていたものである。もし事前に、X大使の正体を知っていたとしたら、私はああまで、彼に対し、強硬なる態度を維持していることができなかったであろう。盲人蛇に怖じずという諺《ことわざ》があるが、私のX大使に対する場合も、それに近いものであった。
さて、私は、これからどうすべきであろうか。日本要塞から締め出しをくった私は、一体いずこへ赴くべきであろうか。
オルガ姫は、最後の節を読みあげた。
「――黒馬博士よ。余鬼塚元帥は、貴下が、このベトンの上を去り、クロクロ島に帰還せらるることを薦《すす》めるものである。クロクロ島は沈没したるも、貴下の手によって、修理し得られるものと信ず。クロクロ島が、貴下の手によって建造せられたるとき、余は博士に祝意《しゅくい》を表するため、磁石砲《じしゃくほう》という機械を贈呈《ぞうてい》し、島内に据付《すえつ》けしめたることを、博士は記憶せらるるや。その折、博士に対
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