少尉がヴォード少尉を呼びに来た。
「おい、ヴォード少尉、すぐ二番砲塔へ」
「よし来た。だが、僕は補充隊員だぜ」
「所《ところ》が、急に敵が殖《ふ》えたのだ。軽巡《けいじゅん》アキレスとエジャクとの二隻が加わろうとしている」
二人の少壮士官《しょうそうしかん》は、一しょに駈《か》けだしていった。それを合図《あいず》のように、シュペー号の主砲六門は、一せいに火蓋《ひぶた》を切った。
あっ、命中だ! 英艦エクセター号の艦側《かんそく》から、濛々《もうもう》たる黒煙《こくえん》があがる。余は……(編集部より申す。海野《うんの》ニセ武官《ぶかん》のブンタデレステ沖の海戦報告は、無電によってここまでは、本社と連絡がとれて、受信中のところ、ここでぷつりと電波は切れました。多分氏自慢の携帯用送信機が英艦の砲弾のため破壊されたのでしょうと思いますが、生々《なまなま》しい報告を生々しいところで失い、甚だ残念ですが仕方がありません。御諒承《ごりょうしょう》を乞《こ》う。尚《なお》、海野ニセ武官の冥福《めいふく》を、読者諸君と共に祈り上げる次第であります)
(×月×日、モンテヴィデオ、先払《さきばらい》電
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