をかくすか、わしをおそってくると思う。だからとりあえず、第二操縦室を占領して、3というボタンをおせ。そうすれば、この部屋でどういうことがおこっているか、向こうのスクリーンにうつるから、それによって、十分注意するように――
この紙きれにうなずいて、山形警部は、五人の少年といっしょに操縦室を出た。火焔放射器を手に、足音をしのばせ、決死のかくごで第二操縦室へ――
ところがその時すでに、X号はどこかへ姿をかくしていたのである。
「やはり、先生のいったとおりだ。X号はどこにもいないよ」
「ほんとうだね。あの紙きれに書いてあったとおり、もとの操縦室をテレビジョンにうつして見ようじゃないか」
だが、自らがいままでおった、第一操縦室の光景が、テレビジョンのスクリーンにうつしだされた時、少年たちも山形警部も、おどろいた。
谷博士のなりをしたX号が、サルのかっこうをした谷博士におどりかかろうとしているではないか。
博士が手ににぎっていた、火焔放射器をただの一撃でたたきおとすと、X号は大手をひろげて博士の上へとびかかった。
しばらくは上になり下になり、人とサル、いや博士とX号の必死の争《あらそ》い。
六人はあまりのおそろしさに、助けにとびだすことさえ忘れて、しばらくは、そこにだまって立ちすくんでしまった。
そのうちに勝負はきまった。サルはぐったりと人間の前の床の上に倒れてしまったのだ。
X号はにたにたと、悪鬼《あっき》の笑いを浮かべながら、博士の頭にメスを入れた。
「どうするんだろう」
「ちょっと待ってみよう」
六人はささやきかわして、そのありさまを見まもっていた。と思うと、X号は博士の頭の中から脳髄をつかみだし、自分の頭の中から取りだした脳髄と手ぎわよく入れかえたのである。
山形警部も、少年たちも、恐ろしさにがたがたと震えていた。
「また脳髄を入れかえたよ。こんどは博士のからだにはいっているのがほんとうの谷博士で、サルのからだにはいったのがX号だよ」
山形警部は、そっと少年たちの耳にささやいた。
手術はまたたくまに終りをつげた。まるでりんご[#「りんご」に傍点]かなし[#「なし」に傍点]をおきかえるように、血一滴出ないくらいであった。
X号は谷博士のからだを、床の上に横たえると、すぐに部屋からとびだしたのである。
「よし、これで向こうの計画はわかった。X号は博士だけは後の役に立てるために生かしておいて、われわれだけを殺そうとするんだ。そのために、サルのからだにはいって、われわれをだまそうとしているんだ。だから、もうけっしてサルのいうことには、ゆだんをしちゃあいけないよ」
少年たちはごくりとつばをのみこんで、うなずいたのである。
まもなく、サルのからだにはいったX号は、この部屋の扉をひらいて姿をあらわした。
さてX号はどのようなことをいいだすだろうか。第一第二の操縦室ともに、操縦者を失ったこの宇宙航空船は、自動操縦機の力によって、二万五千メートルの高空を、電光のような速力で、飛びつづけているのだった。
小型ロケット機発射
「さあ、みんなぐずぐずしてはいられないよ。X号はこの航空船に爆弾をしかけて、小型ロケット機で逃げだしたんだ。われわれもこうしていては、命がないから、一刻も早く、別の小型ロケットで、ここから脱出しよう」
サルのからだに入りこみ、谷博士だとみせかけたX号は、声まで谷博士に似せて、このようなことをいった。
「先生、それはほんとうですか」
「ほんとうだとも、うそだと思うなら、これを見たまえ」
X号はつかつかと壁に歩みより、13というボタンを押した。スクリーンには、またもや別な部屋の光景がうつしだされたが、その床には黒い爆弾のようなものがおかれてあって、その上の時計は、こつこつと時を刻《きざ》んでいるのだった。
「時限爆弾だよ。あと五分で爆発する」
「さあ、それはたいへんだ。先生、助けてください。みんな、早く逃げだそうじゃないか」
山形警部は、ほんとうにおどろいたようにあわてて見せたのである。
「さあ、それじゃあ、みんなこちらへ」
X号は先に立って、部屋を出ると、階段をどたどたと一階までおりて来た。その最後部《さいこうぶ》の部屋へはいると、X号はひざまずいて、まるい鉄のふたをひらいた。中には小さな部屋があって、垂直《すいちょく》な鉄ばしごがさがっている。
「さあ、みんなこの中へはいるんだ」
X号は中を指さして命令した。
「先生、ちょっと待ってください」
山形警部は、出口の方へかけもどろうとした。
「何をする。君は気が変になったのか。あと二分で爆弾が爆発するというのに、どこへ行くつもりだ」
X号は、目を怒らせて、警部をにらみつけた。
「いや、自分のからだが、冷蔵室においてありますか
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